静かな部屋の片隅に、小さなガラス瓶が置かれていました。
その中には、ふわふわとした緑の苔が広がり、まるで小さな森のよう。
しかし、その森には誰も知らない秘密がありました。

夜になると、小瓶の中にそっと光が灯ります。
それは、この森に棲む小さな妖精 「リル」 の輝きでした。
リルはいつも光の泉で遊んでいました。

リルは、苔の森の守り手。
透明な羽を持ち、朝露のようにきらめく髪をした、ちいさな妖精です。
彼女の仕事は、苔に魔法の息吹を吹き込み、森の生命を育むことでした。

ある日、小瓶の外の世界で、持ち主の少女 ユイ がため息をつきました。
「なんだか最近、疲れちゃったな…」
ユイは忙しい日々に追われ、心が少し疲れていたのです。

それを聞いたリルは、小さな決意をしました。
「この森の緑の力を、ユイに届けよう！」

リルは苔の上に舞い降りると、そっと魔法をかけました。
すると、瓶の中の苔がふわりと光り、ほんのりと甘い森の香りが広がります。

次の日、ユイが小瓶を見つめると、不思議な心地よさに包まれました。
「なんだか、心がほっとする…」

リルはそっと微笑みました。
彼女の魔法は、気づかれないほど小さなもの。
けれど、それは確かにユイの心を癒していたのです。

こうして今日も、小瓶の森の中で、リルはそっと魔法をかけています。
持ち主が気づかないほどの小さな優しさを届けながら──。

瓶のサイズ

直径4ｃｍ　　高さ8ｃｍ