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2026/01/15 10:52
語り手:時の旅人(木霊 詩生)
序章:旅人の独白
この物語を語る私は、時間を旅する者。 過去、現在、未来……色々な時代を巡りながら、その瞬間の「記憶」を星の中に刻んでいく存在です。
人からは「時の旅人」、あるいは「星の旅人」と呼ばれることもあります。
私の記憶の中で、ひときわ美しく、そして切ない輝きを放つ「星の記憶」があります。 これは、ある少年の物語です。
第一章:森の生活
それは、今よりもずっと昔のこと。 豊かな緑に覆われた山奥に、きこりのおじいさんと、一人の少年が住んでいました。
森は、ただの木々の集まりではありません。 リスやウサギ、優しいクマや鹿たちが駆け回り、小鳥たちのさえずりが音楽のように響き渡る、生命(いのち)の楽園でした。
そして、澄んだ瞳を持つ者だけが気付くことのできる、もう一つの住人たちがいました。 木の葉の陰で羽を休める可愛い妖精たち。森の静寂を守る精霊たち。 そこは、目に見えるものと見えないものが共存する、聖なる場所だったのです。
私はその光景を、じっと見守っていました。 決して干渉してはならないという掟を守りながら、それでも、その温かな日々に心を寄せていました。
しかし、永遠に続くかと思われた穏やかな日々にも、終わりの時が訪れます。 おじいさんが天寿を全うし、亡くなったのです。 残された少年は、森の動物たちと生きていくことを望みましたが、幼い子供が一人で暮らすには、森の冬はあまりに厳しすぎました。
私は歯がゆく思いました。森には豊かな恵みがあること、動物たちが助けてくれることを伝えたくても、彼らに私の声は届かないからです。
結局、町で暮らすおばあさんが少年を引き取ることになり、彼は愛する森を離れることになりました。
第二章:町の煌めき、心の渇き
町での暮らしは、森とはまるで違うものでした。 そこには、一緒に遊んでくれる動物も、話しかけてくれる小鳥もいません。
町の人々の生活は、一見すると「豊か」に見えました。 煌びやかな装飾、溢れるほどの食べ物、たくさんの「モノ」に囲まれた生活。
けれど、不思議なことに、人々はちっとも幸せそうではありませんでした。 「もっと欲しい、もっと豊かになりたい」 モノが増えれば増えるほど、人々の心は渇き、争いが絶えなくなっていったのです。
少年はその中で、懸命に生きていました。 誰にでも優しく接する少年でしたが、その純粋な優しさは、余裕のない町の人々には疎ましく映ることもありました。
私は危惧しました。優しさは時に、自分を守る盾を持たない弱さにもなり得るからです。
そんなある日、一部の大人たちが気付いてしまったのです。 山奥にあるあの森が、どれほど価値のある木々や資源に満ちているかということに。
「あの森の木を売れば、もっと豊かな暮らしができる」 欲望は伝染し、ついに町の人々は、精霊たちが守る聖なる森へ足を踏み入れる決意をしました。
第三章:傷ついた帰還
「森に入ってはいけない! あそこはみんなの命の場所なんだ!」 少年は必死に訴えました。彼と心を同じくする友達も声を上げました。
しかし、欲望に駆られた大人たちの足を止めることはできませんでした。 人々は雪崩を打つように、森へと向かいました。
少年は走りました。 友達である動物たちに、危険を知らせるために。 けれど、町での暮らしに慣れてしまった少年の足は、大人たちに追いつくことができません。
歩いても、歩いても、懐かしい森は遠いのです。
ようやく山に近づいた時、少年の目に飛び込んできたのは、信じがたい光景でした。 ゆりかごのように優しかった木々は切り倒され、大地は荒らされ、逃げ遅れた小さな動物たちが息絶えていました。
少年の心は引き裂かれました。 何よりも辛かったのは、大切な友を守れなかったこと、そして、町の人々の暴走を止められなかった自分自身の無力さでした。
第四章:星からの贈り物
ようやく、おじいさんと暮らした山小屋にたどり着いた時、少年の体はもう限界を迎えていました。 小屋の前で崩れ落ちるように倒れ込んだ少年の視界に、一羽のウサギが入りました。
かつて仲良しだったそのウサギもまた、傷つき、悲しげな瞳で少年を見つめていました。
「ごめんね……」 少年は涙を流しながら、最後の力を振り絞り、神様に祈りました。
二度とこんなことが起きないように。 この悲しみが繰り返されないように。 その願いは、自分の命と引き換えにした、切実な祈りでした。
生き延びた動物たちが、倒れた少年の周りに集まってきました。 傷ついた体を引きずるようにして、彼らは少年に寄り添いました。
辺りはいつしか、深い静寂と闇に包まれていきました。
その時です。 すべてを見守っていた私は、一つの決断をしました。 「……彼らに、光を」
歴史を変えることはできない。けれど、この純粋な魂に温かい光を届けること、それだけは許されるはずです。 私は星々の力を借りて、一筋の光を地上へ送りました。
暗闇の夜空から降り注いだその光は、音もなく、優しく、少年と傷ついた動物たちを包み込みました。 それは「癒やし」の光であり、星の世界からの「迎え」の光でもありました。
星は生命(いのち)そのものなのです。
終章:白い花と星の誓い
遅れて到着したおばあさんと町の人々は、目の前の光景に言葉を失いました。 そこには、少年の亡骸はありませんでした。 少年のいた場所、そして傷ついた動物たちがいた場所は、数えきれないほどの「白い花」で埋め尽くされていたのです。
暗い森の中で、その場所だけが淡く発光しているかのように、神々しい美しさを放っていました。
最初に泣き崩れたのは、おばあさんでした。 少年の友達も、そして大人たちも、その場にひざまずきました。 白い花に姿を変えた少年の、無言のメッセージが、人々の凍った心を溶かしていきました。
「私たちは、取り返しのつかない過ちを犯してしまった」 一人の大人がつぶやきました。 「この森を……彼が愛したこの世界を、今度こそ私たちが守っていこう」
その夜、見上げた空には、今まで見たこともないほどたくさんの星が輝いていました。 まるで昼間のように明るく、地上を照らしています。
それは、星となった少年の願いが、仲間たちを引き寄せた輝きでした。
あの時から、私は思うのです。 夜空に瞬く星の一つ一つは、誰かの「願い」や「優しさ」の記憶なのだと。 そして今も、星になった少年は、空から私たちを見守っているのです。
小さな願いが集まれば、いつか必ず大きな光になることを信じて。
作・語り:木霊 詩生

【鉄は、星のかけら】 なぜ、冷たく硬い「鉄」で、温かい妖精や動物を作るのか? それは、鉄という物質が、かつて宇宙で輝いていた「星のかけら」そのものだからです。
私の作品に登場するメタルの妖精や動物たちは、単なる金属の置物ではありません。 遠い昔、星になった少年や動物たちの魂が、長い時を経て鉄の中で眠っていた姿なのです。
私はその記憶を感じ取り、溶接の火花とハンマーの響きによって、彼らを再び「形」あるものとして呼び覚ましています。
【彼らが住まう、永遠の森】 目覚めた妖精たちが、今度こそ安心して遊べる場所が必要です。 そのために、生命力あふれる「苔(テラリウム)」の森と、悠久の時を積み重ねた「カラーサンド」の大地を作りました。
植物が主役となり、砂と土がそれを支え、そこに妖精たちが宿る。 「美ジタク」がお届けするのは、すべての存在に生命が宿る、小さな癒やしの世界です。
日常のふとした瞬間に、星の記憶と自然の温もりを感じていただければ幸いです。
